遂にワインも宇宙へ!?宇宙ワインとは?

宇宙ワイン

ワインコンサルタント&ソムリエの広瀬勇二です。

ワインコンサルタント&ソムリエの広瀬勇二

今回のテーマは、「遂にワインも宇宙へ!?宇宙ワインとは?」です。

今や世界各国が競い合うようにして宇宙に進出し、制空権ならぬ「制宙権」を争う時代。

衛星情報を基にしたミサイル探知や軍事作戦の指揮・命令系統を混乱させるため、相手国の衛星を破壊・妨害する兵器の開発なども相次ぎ、宇宙の軍備管理は国際法が曖昧な中、宇宙が「戦場」となる恐れが高まる昨今、その近い未来とも言えるであろう宇宙空間に遂にワインが飛び出した。

最近は、宇宙船の中で野菜を栽培して食用にする実験も進められております。

米航空宇宙局 (NASA) では、国際宇宙ステーション (ISS) で栽培された植物の実験を続けており、特にレタスは注目されている植物の一つで、専門家がデータを収集し、宇宙飛行士のための最終的な宇宙食品開発への道を見出そうとしています。2015年には宇宙ステーションのクルーは初めて宇宙で育てたレタスの栽培に成功し、試食した結果とても好評だったそうです。

いよいよ宇宙空間での生活の実現が現実味を帯びてきて、上記のような植物栽培の研究も進む中、ワインが宇宙デビューしたことは大変興味深いですね。

今回は、この宇宙ワインについてお話させていただけたらと存じます。

記念すべき、最初に宇宙に出たワインは?

先に結論を言いましょう。

太古の昔のそのまた昔に、今よりも栄えていた文明があったなどと言った伝説的なお話は置いておいて、初めて宇宙空間に飛び出した記念すべきワインは「Petrus(ペトリュス) 2000年物」です。

アメリカの宇宙企業スペースXは、2019年11月、実験の一環として1ダースのワイン「ペトリュス2000年」とワインに使用されるブドウの挿し木300本以上を宇宙に向けて打ち上げました。

ワインは国際宇宙ステーション(ISS)で地球を周回しながら、計438日19時間を過ごし今年1月14日に地球に帰還しました。

「宇宙空間がワインの質にどのような影響を与えるのか?」に注目が集まり、地球上で最もレアなワインともなったこのベトリュスは、大手競売商クリスティーズで、当事者間によるプライベートセール方式で発売されており、地上で熟成されたものとは異なる複雑な風味があるとされ、100万ドル(約1億900万円)の値が付くと期待をされるまでに至っているようです。

気になる点はやはりその味わい。そもそも味自体が変わっているのか?だとすればどのような変化を遂げているのか?
 
欧州のスタートアップ、スペース・カーゴ・アンリミテッドによると、少数の専門家がこの「宇宙ワイン」を試飲し、ブラインド・テイスティングで地球のワインと比べてみた記録があるようです。

結果、専門家らは「見た目と味の両方に大きな変化が見受けられる」と指摘。スペース・カーゴ社の発表によると、特にワインの色が大きく変化していた。宇宙ワインは「明るいレンガ色」をしており、「ルビーの色相にレンガのような反射」があり、「エッジ(液面の縁)の色はレンガの色合いがあり、ディスク(液面)に沿って少しピンクがかっている」とされた。とのこと。

このコメントを見る限り、「見た目と味の両方の変化」というのは、地球よりも早く、そして良い熟成をしたということであろう。

これは実験の第1段階で、今後宇宙ワインは研究室にて分子レベルで解析されるとのこと。

また微小重力がブドウの木の成長に与える影響なども今も研究が続いるようで、宇宙に持ち込まれたブドウは、地球のものよりもかなり早い段階で花が咲いたことが確認されているようです。

環境が変われば何かしらが変わる。

宇宙ワイン。科学的に何かがさ立証されているわけではないようですが、宇宙に出たことによって何かしらの変化を遂げていることは間違いないようです。

宇宙ワインを分析してみる。

前述したように、宇宙ワインの特性を簡単に言うならば「地球よりも早く、良い熟成をする」と言えそうなのですが、実はそう感じなかったという意見もあったようなのです。

ワイン専門誌の「The Decanter(デキャンター)」でライターを務めるワイン専門家のJane Anson氏は、「どちらもゴージャスな味わいでしたが、地球に残っていたものはまだ少し閉じていて、よりタンニンがあって若かったです。宇宙にあったものはタンニンがより柔らかくなり、花の香りがより多く出ていました」とコメントし、2つのワインには違いがあったと主張しましたが、その一方で、ワイン専門家のFranck Dubourdieu氏は「定義するのは簡単ではありませんでした。正しく理解できたかどうかわかりません」と述べ、正直なところ違いを識別するのは難しかったとしています。

味覚は人それぞれですから、どちらが正しいとは言い難いのですが、この意見を聞くかぎり「誰もが感じることができる大きな変化」というわけでもなかったように感じます。

実験を支援したLebert博士は2つのワインに違いが出る理由として、地上と宇宙空間における「対流」の差を挙げています。ワインをグラスに注ぐ前に「デキャンタ」と呼ばれるガラス容器に移したり、グラスの中で揺らしたりすると(スワリング)、ワインの酸化が加速して味わいや香りに変化が現れます。熟成中のワインでも、周囲の酸素と反応してゆっくりと酸化が進んでいますが、対流によってワインの周囲は常に一定の酸素濃度に保たれています。ところが、無重力の宇宙空間では対流が発生しにくいため、酸化が進みにくい。と述べております。

この分析も見ると、「宇宙の方が早く熟成する」というよりは、むしろ「宇宙の方が遅く熟成していく」と言及しているようにすら感じます。

話はちょっと逸れますが、あの有名なSF映画でも、宇宙を彷徨い帰ってきたら地球では膨大な時間が経過していたという衝撃的なラストシーンがあります。

この不思議な現象は、アインシュタインの相対性理論である「速く移動するほど、止まっているものより時間の進み方が遅くなる」によるものなのですが、実際に速さによる時間の遅れは起きています。

カーナビゲーションなどで正確な位置がわかるのはGPS衛星のおかげですが、GPS衛星は時速約1万4000kmという高速で移動するので、地球の時計より毎日100万分の7秒遅くなり、そのための補正が行われてるとのことなのです。

これらの事由も考慮すると、やはり宇宙ワインはどちらかと言えば「地球よりも遅く熟成する」と考えられないだろうか。

2023年に民間人初となる着き周回計画を控え、「宇宙民主化」を掲げているZOZO創業者の前澤友作氏も話題になっておりますが、是非この宇宙ワインの謎も解明してただきたいものです。

まだ宇宙そのものとともに未知数な宇宙ワインですから、これからまだまだ隠されていた事実が出てくるかもしれませんが、いずれ「ワインを熟成させるなら宇宙で」という概念と商売も生まれてくるかもしれませんね。

地球上にも残されている未知の領域⁉︎海底ワイン

人類がこぞって目を向けている宇宙ですが、今一度地球を見つめ直せば、地球上にもまだ人類が到達していない領域があります。

それは深海です。

世界一高い山であるエベレストにも匹敵する約8,000メートルの深海に潜ることは、現在の科学力をもってしても非常に困難とされております。

宇宙に比べれば限りはありますが、深海も人類未踏の領域であることは事実です。

今回、未踏の領域とまではいきませんが、海の中での熟成を試みた海底ワインについてお話をさせていただきます。

海底で80年間も眠っていたエドシック・モノポールや、18世紀後半に難破した船から見つかったヴーヴ・クリコなど、沈没船と共に長い間海底で眠っていたワインが見つかったことが事の発端のようです。

アドリア海などでは、かなり前から海底でワインを熟成させているそうですが、日本でも海底でワインを熟成させる可能性を追求するべく「Venusプロジェクト」を立ち上げ運営している、株式会社コモンセンスという会社が『海底ワイン』に挑戦をしているようです。

代表の青樹英輔氏が20年来通っている南伊豆の中木海岸の地元のダイビングショップ『中木マリンセンター』の協力を得て水温や環境を調査したところ、この海域の海水温は年間を通して12度〜16度とワインにとってぴったりだったとのことで、この中木海岸の沖合水深15mに、海底熟成保存のための海底貯蔵庫を作り、オリジナルの海底ワイン『SUBRINA』の製造が始まりました。

海底が貯蔵庫として適している理由としては以下の3つが挙げられるようですが、

① 海底だと、水温が15℃〜18℃と変わらずに安定しているので、ワインの熟成に適していること。

② ワインが劣化する一番の原因である太陽の紫外線が差し込まないこと。

③ これは仮設ですが、海の中にある音(水の音、魚の泳ぐ音や鳴き声)が波動としてボトルに伝わり、中のワインに影響を与えること。

海底で約7ヶ月の熟成を経たこの海底ワインの一番わかりやすい味わいの変化は、アルコールの刺激が和らぐように感じる点とのことです。

慶応義塾大学の先端生命科学研究所の成分分析結果では、アミノ酸や有機酸に変化があることもわかったようで、アルコールの刺激がおさまることに関して興味深い研究は他にもいくつかあるようです。

例えば、超音波熟成の特許を持っている大手酒造メーカーが、音響を与えることで蒸留酒の分子の結合状態が変わりまろやかになったという現象もあるようで、科学的根拠があるわけではありませんが、様々な実験などから海の振動が熟成に多少の影響を及ぼしているとも言えるようです。

振動といっても瓶を揺らすわけではなく音のような周波数とのことで、海の中で絶えず流れている波の音、石の音、そして海中は空気よりも密度がとても高いので、遠くまで早く音が届く性質があり、これらの振動のエネルギーが瓶の中に影響を与えているのではないかと考えられているようです。

確かに実際にクラッシック音楽を流しているようなワイナリーもありまし、振動はワインにとっては大敵と言われておりますが、このような音波がワインに与える影響は少なからずあるのかもしれません。

海底15mでは、正直地球規模で見れば深いとは言えませんが、宇宙同様、海にもまだまだ神秘があるのかと思うと、この海底ワインもとても興味深いワインですね。
↓↓↓
海底熟成ワイン・SUBRINA サブリナ: オンラインショップ

というわけで今回はのテーマは、「遂にワインも宇宙へ!?宇宙ワインとは?」でした。

関連記事

大人ワイン.comとは?

「大人ワイン.com」は、「ワインは何だか小難しくて取っつきづらい」また「ワインは好きだがもっと楽しみ方を知りたい」そして「ワインは大好きで勉強もしているが、ソムリエ教本や学校では学べないちょっとお洒落なウンチクも知りたい」といった様々なご要望にお応えする為に、極力丁寧にわかりやすく、且つ自分のレベルを今よりワンランク上げる為のワインの楽しみ方をお伝えする、文字通りそんな向上心旺盛な皆様に贈る「大人のワイン講座」です。

人気ブログランキング

免責事項

当サイト上に掲載されている情報の内容については万全を期しておりますが、これらの情報によって万が一いかなる障害が生じた場合も、当社および情報提供者としては一切の責任を負いかねますのでご了承の上、ご利用いただきますようお願い申し上げます。お問い合わせや広告掲載のご依頼はこちらまでお気軽にご連絡下さい。
ページ上部へ戻る