ワインコンサルタント&ソムリエの広瀬勇二です。
今回のテーマは、「ワインの正しい開け方は?コルク抜きがない時はどうする?」ということで動画も交えて解説します。
Contents
抜栓の意義
ワインに限らず、あらゆる飲料の栓を抜いて開けることを「抜栓(ばっせん)」と言います。ワインでなくても使われる言葉かもしれませんね(^^)。
結論を言えばフタが開いて飲めればそれで良い訳ですが、フランス語ではワインには定冠詞(英語で言うa、anではなくthe)が付くくらい、ある意味人間と同じくらい敬うべきものという扱いになっており、故に抜栓も他の飲料に比べると若干注意が必要な場合も多々あり、特にオールドヴィンテージワインに関しては、細心の注意を払わないとせっかくの素晴らしい熟成を経たワインが台無しになってしまいます。
ワインの抜栓は、言わば眠れる美女を起こすのと同じ。
長い間眠っている美女程優しく起こさなくては機嫌を損ねてしまいますね(笑)。
今回は、一般的なワインの抜栓、またオールドヴィンテージワインの抜栓、そして、もしピクニックなどでワインオープナーなどを忘れてしまった時の裏技、なんて事もお伝えしていきたいと思います。
一般的な抜栓
ワインを開ける際、工程としては大きく分けて以下の3つがあります。
1.キャップシールをはがす。
2.コルクスクリューをコルクに差し込む
3.栓を抜く
この3工程。
ソムリエナイフを使ったソムリエ協会が定めている所作での一般的な抜栓は、色々なサイトなどでわかりやすい動画付きで説明されているのでそちらを参考にしていただければと思いますが、ここでは文章にはなってしまいますが簡単な説明と、動画だけではわからない注意事項などをお伝えしていきたいと思います。
まずは「1.キャップシールをはがす」ですが、ソムリエナイフを使った抜栓ではここでしっかりと綺麗にキャップシールをはがすことができるかでワインにどれだけ接しているかがわかってしまいますので、是非しっかりとマスターしておきたいもの。
最初にボトルの首の部分に切れ込みを入れますが、ソムリエナイフで綺麗にキャップシールをはがすコツとしては、しっかりとナイフでボトルの首の部分に切り込みを入れること。
これが疎かになってしまうと、キャップシールをはがす時に切れ込みが甘い部分がはがしきれずに残ってしまい、その残った部分から見栄えが汚くなってしまいます。
遠慮してチョコっとではなく、大きく入り込んでボトルの首を切るようにグルッと、そしてナイフを返して反対側もグルッと、どちらも一回だけでボトルの首を一周回すくらいのつもりでナイフを大きく使ってください。
また、ボトルの首に当てるナイフの角度も真っ直ぐではなくボトルの上に向けて鋭角に、まさにワインの首を切るくらいのつもりでやや上に力を加えてあげてください。
次に「2.コルクスクリューをコルクに差し込む」ですが、こちらも下手にモタついて何度もやり直しをしたりしていると、不慣れ感が出てしまうことはもちろん、何よりコルクを傷つけてしまい余計に抜き辛い状態に陥ってしまいます。
ここでのコツは、実は最初の一巻き。
動画などではソムリエがいとも簡単に流れるようにコルクスクリューを扱っているのでわかりませんが、実は最初の一巻きをいかにコルクにスクリューを差し込むことができるかがその後のコルクの入り方も変わってきます。
考えてみれば当たり前のことではありますが、一度スクリューが通るレールができてしまえばあとはただ回すだけでスクリューはコルクに入っていきますので、最初の一巻きは大きく、やや押し込みながら回してスクリューが通るレールをしっかりと作るような感覚で入れてみてください。
最初の一巻きで、もう手を離してもスクリューがめり込んで立つくらい(オールドヴィンテージではしっかりとスクリューが入りきるまでてを離したりなんてしてはいけませんが(^_^;))のつもりで。
スクリューの先端の方を人差し指と親指で挟むようにして固定しながら巻き込むと、スクリューがブレずにしっかりと入っていきます(^^)。
通常のコルクの状態であれば、あとは優しく巻いていけば自然とスクリューが入っていきます。
そしてスクリューは全て入れるのではなく、約1巻き分残した状態で止めます。
そして最後「3.詮を抜く」ですが、これはソムリエナイフのフックの部分を使ってテコの原理でコルクを引き抜く訳ですが、この際、一度に抜こうとするのではなく、最初は約7〜8mm程度だけを抜く目安で力を入れてください。
コルクが無事少しだけ抜けたら、その後スクリューの残りの一巻きを巻いて、より深くスクリューを入れてからもう一度フックを使って残りのコルクをゆっくりと抜いてください。
この際、勢いよく引っこ抜いて「ポンッ!」という音を立ててしまうのではなく、できれば優しく音を立てずにコルクを抜いた方がエレガントです(^^)。
コツとしては真っ直ぐ引っこ抜くのではなく、最後だけは奥か手前にコルクを倒すように抜くと最悪「プシュッ!」という音だけで済みますし、所作としての見栄えもとてもスマートです。
抜詮時は最初が一番力がかかりますので、一回で一気に抜こうとするとコルクが折れてしまう可能性も高いので注意しましょう。
オールドヴィンテージの抜詮、サーブ
普段からワインに接していて、比較的抜詮にも慣れている方々でも一筋縄ではいかないのがオールドヴィンテージの抜詮です。
いつものように手慣れた手つきで軽率にコルクを抜きにかかると、あっけなくポロっと折れてしまいます。
オールドヴィンテージワインの抜詮は、若いヴィンテージのそれとは違う最新の注意を払わねばなりません。
ここでは、普段なかなかお目にかかれないオールドヴィンテージの抜詮の動画も観ていただきながら、解説を交えて御説明させていただきたいと思います。
まずはこちらの動画を御覧ください。
いかがでしょうか?
このように抜詮しなければならないという訳ではございませんが、何故このようにしているかには意味がございます。
いくつかポイントがございますので解説させていただきます。
まずはビニールキャップの剥がし方です。
通常の抜詮とは違い、キャップの一番下からナイフを入れて全て剥ぎ取っていますね。
これは、キャップの裏側を確認する為です。
もしキャップの内側にワインのシミなどが付いていれば、それはワインが噴き出してしまったという形跡であり、残念ながら良い状態で保管されていなかった、もしくは輸送経路、輸送手段に問題があったということになります。
オールドヴィンテージワインにおいて、ワインがどのように保管されていたか、またどのように輸送されてきたかは極めて重要で、それによりワインのコンディションは大きく変わります。
次にコルクスクリューの挿入ですが、よく観ていただくと、最初の一巻き、二巻きくらいはスクリューの先端を人差し指と親指で挟むように持ち、スクリューをしっかりと固定してコルクに回し入れております。
オールドヴィンテージの抜詮においてスクリューの最初の挿入は特に重要で、ここでしっかりとスクリューを入れて軌道を作れなければコルクを悪戯に掘ることになり、コルクがポロポロと崩れていくきっかけを作ってしまうことになります。
次にスクリューの入れ具合ですが、ちょっと見え辛いかもしれませんが、通常の抜詮よりもかなり深くまでスクリューを回し入れて、コルクを完全に貫通させております。
これは動画中の説明にもあるように、ボトル内と外の気圧を合わせる為です。
この気圧を合わせる動作を怠ると、ボトル内から強く引っ張られている状態でコルクを抜くことになりますので、自ずとコルクは折れやすくなってしまいます。
ある程度気泡が落ち着いたことを確認し、深く入れたスクリューを一巻き、二巻き戻してから抜詮動作に入っているのがわかると思います。
その後、瓶の口とソムリエナイフをしっかりと固定し、テコの原理を使って真っ直ぐ上に力が加わることを意識しながら、まずはゆっくりとコルクを少しだけ(約1cm。7〜8mmとも言われております)引き抜きます。
無事少し引き抜けたら、再度気泡やコルクの状態を確認し、異常が無ければ再びスクリューを1、2巻き巻き入れてコルクを貫通させます。
動画内にもあるように、ここで再びコルクを貫通させることで、スクリューにしっかりとコルクが固定されたまま抜詮することができますので、コルクがどちらかに引っ張られることがなく、そのままの状態で引き抜くことができます。
あとは少しずつ少しずつ、その都度コルクの状態も確認しながらゆっくりとコルクを引き抜き、最後に瓶の口元に付いた汚れを拭いてあげれば抜詮完了です(^^)。
そしてワインのサーブですが、理想を言えば御覧のようにパニエ(フランス語でカゴの意)に固定してあるボトルを傾けるだけで注ぐのが望ましい。
オールドヴィンテージワインは当然澱もたくさん入っております。
パニエはワインを飾るものではございません。もちろんパニエに入れることによって演出にもなりますが、ワインをパニエに入れる一番の目的は、ボトル内に溜まっている澱が舞ってしまうことを防ぐことです。
どういう事か…。ワインは通常ワインセラーの中で横になって眠っておりますね?これを立ててしまうと、ボトル内の沈殿していた澱が舞ってしまい、再びボトル内に澱が飛び回ってしまうのです。
ですので、ワインセラーからワインを取り出す時も絶対にワインは立てず、横の状態のまま静かにパニエに入れてあげてください。
よくレストランなどでオールドヴィンテージワインを「随分仰々しく馬鹿丁寧にワインを持ってくるな〜」と感じるソムリエの方を見かけるかもしれませんが、あれは決してオーバーな訳ではなく、本当にワインをよく知っていて、皆様に最高の状態で御提供しようとしてくださっている証拠なのです。
ですので、どうか「早く持って来いよー!」などといったソムリエの誠心誠意を尽くした気遣いを無駄にするような発言はせず、「このソムリエなら最高の状態のワインが飲める!」とむしろラッキーと思って待ってあげてください(^^)。
そしてこちらのソムリエの方は自分がテイスティングするべきワインに一切口は付けておりませんね。
軽くスワリングをして香りを確認するだけ。
ワインのコンディションの良し悪しだけであれば、口に含まなくても香りで充分確認できるのです。
そしてお客様に御提供するワインは、グラスに注いだ後にスワリングはせず、代わりに静かにゆっくりとグラスを横に傾けてワインをグラスの上部にまで浸しながら、そのままグラスを回してグラスに香り付けをするリンスという形をとっております。
これは、デリケートなオールドヴィンテージワインはゆっくりと開いてくるので、無闇にクルクルとスワリングをしてこれから少しずつ出てくるであろうワインのポテンシャルを損なわないようにする為です。
不思議なもので、オールドヴィンテージワインはまるで自分の人生を順を追って語るかのように本当に少しずつその隠れたポテンシャルを露わにします。
ですので、まだ開いてないからといって決して無闇にスワリング、デカンタージュなどをするべきではないのです。
オールドヴィンテージワインの嗜み方、向き合い方
「このワインは開いていないからデカンタージュしよう!」よく耳にするフレーズですね。
もちろんデカンタージュするのは飲む人の自由ですが、私は無闇にデカンタージュするのはオススメしません。
こちらの動画を御覧ください。
御覧の通り、グラスの中のワインを回して悪戯にスワリングするのではなく、グラスを横にしてワインは静置させたまま、グラスだけを回して香り付けをするリンスという形をとっております。
こちらの店舗、一つのオールドヴィンテージワインをなんと3つのグラスを使って、それぞれトップ、ミドル、フィニッシュの部分に分けてサーブしてくださいます。
動画内の御説明通り、コルクに接していたトップの部分はコルクの履歴が残っており、時間が経つにつれてワイン自体も少しずつ開いてくるので、ミドル、フィニッシュの部分も各々本当に味わいが違います。
デカンタージュをしてしまうと、この三つの部分の各々の特徴が混ざってしまい、せっかく少しずつ自分の生い立ちを語ろうとしていたワインの話すスピードを早める結果になってしまいます。
またスワリングも然りで、何でもかんでも注がれたワインを軽率にクルクル回すのではなく、スワリングをするにしても本当にゆっくりと1、2回転、もしくはスワリングはしなくても良いくらいです。
確かにデカンタージュをすることによってワインは開きますし、味わいは均一化されますので複数人で飲むには適しているかもしれませんが、人に例えるならば幼少期や青春時代のことを聞かずに今の姿を見ていることになりますので、そのワインの本当の魅力を見逃していることになるかもしれません。
せっかく何十年もの長い眠りから目覚め我々に語りかけようとしてくれているオールドヴィンテージワイン。どうせならゆっくりとその話の全てを聞きたいですよね。
デカンタージュをして無理矢理話を聞き出すのではなく、ワインのペースに身を任せて待ってあげてください。
きっとワインの方から少しずつゆっくりと、様々なストーリーを語りかけてくれるはずです。
もしもワインオープナーを忘れてしまったら?
皆様はピクニックやバーベキューなどにはワインは持っていく方ですか?
「必ず持って行きます!」と答えていただきたいところですが、日本人はまだまだワインに馴染みが少なく、特にBBQなどには「やっぱりビール!」とおっしゃる方が多いかもしれませんね(^_^;)。
私はもちろん必ずと言って良い程何かしらワインを持って行きますが、誰しもが簡単に開けられるようにとスクリューキャップのワインを持参することが多いですかね(^^)。
しかし、時には気合いを入れてちょっとした上級ワインなんかを持って行くと、おっちょこちょいの私がたまにやってしまう失敗はワインオープナーやソムリエナイフを忘れてしまうこと!(>_<)
しっかり者であろう皆様はこんなドジはされないとは思いますが、万が一ソムリエナイフ等のワインを開ける器具を忘れてしまった場合はどのようにしてワインを抜詮すれば良いのだろうか…?
スクリューキャップであれば全く問題はございませんが、瓶に押し込まれているコルクを何も使わずに素手で引き抜こうなんて、そもそもコルクを持つこともできないので絶対に不可能な事。
しかし、実はワインオープナーが無くても素手でワインを開ける術があるんです!
その方法とは、実はこんな感じ!(^_^;)
↓↓↓
動画準備中
ちょっとお行儀は良くないのであくまでプライベートでカジュアルな場でのみ有効な手段だとは思うのですが、まずは靴やら何かをクッションとしてボトルの底に固定し、ボトルが割れないように注意をしながら、あとは動画通りそのままワインの底を壁なりにトントン、いやガンガン叩きつけていくと、徐々にコルクが上がってきて、それを引っこ抜く訳です!(笑)
フランス人などはワインオープナーを忘れた時は、またワインオープナーが手元に無いのに目の前のワインを飲みたい時には平気でこれを日常的に実践しているようです(^_^;)。
この方法以外にも、調べると他にも色々と興味深い開け方があるようです。
しかしながら、この方法はかなりワインを振ることになりますし、他の方法でも振動その他、ワインにストレスをかけていることは間違いないですので、オールドヴィンテージワインはもちろん、やっぱりワインはちゃんとオープナーを使って開けてあげたいものですね(^^)。
というわけで今回のテーマは、「ワインの正しい開け方は?コルク抜きがない時はどうする?」でした。