日本人が意外と知らない『映画とワイン』のおすすめ豆知識をご紹介!

映画とワイン

ワインコンサルタント&ソムリエの広瀬勇二です。

ワインコンサルタント&ソムリエの広瀬勇二

今回のテーマは、「日本人が意外と知らない『映画とワイン』のおすすめ豆知識」です。

ワインは優雅なイメージを与えるお酒。映画のワンシーンでも結構使われていて、ワインの造詣が浅いとスルーしてしまいがちですが、実はそのワインが作中においてもとても強いメッセージ性があったりもします。

欧米ではワインが日本よりも日常的ですから、日本人では気がつかないようなワインを使った演出やメッセージが当たり前のように流れているシーンが結構あります。

そのワインがどのようなワインなのかを知っているか知らないかによって、そのシーンの感じ方も変わってきます。

そういう意味でも、やはりワインの知識は多少知っていた方が、人生がより豊かになるのかもしれませんね。

今回は、皆様も御存知のような有名なシーンから、恐らく御存知ないのでは(できれば御存知ないことを願います)と思われるシーンを、その映画もご紹介しつつ、おすすめ豆知識として実際にそのシーンに使われたシャンパーニュ、ワインとともにご紹介させていただけたらと存じます。

あの名台詞「君の瞳に乾杯」。中身は何?

仮に映画は観たことはなくても、日本人であればこのセリフだけは聞いたことがあるであろうあまりに有名なワンシーン。

映画「カサブランカ」にて、ハンフリー・ボガートがイングリッド・バーグマンに発するこのセリフ。

この「君の瞳に乾杯」は、実際には「Here’s looking at you, kid.」と発されており、直訳するならば「君を見る男がここにいるよ」といったところでしょうか。せいぜい「君を見つめて乾杯」といったところでしょうけども、それを「君の瞳に乾杯」と訳した当時の翻訳担当の高瀬鎮夫氏のこの翻訳は、今も尚、日本語訳が原作を超えた瞬間として語り継がれる名訳となっております。

この「Here’s looking at you,kid」というセリフ、劇中では合計4回発せられており、一番最初に二人が出会い乾杯をするシーンだけ「謎の美人に乾杯」と訳されているDVDもあるようです。

本来同じセリフが違う言葉で訳されているのは正確な翻訳ではないのかもしれませんが、確かに最初と最後ではシチュエーションが全然違いますので、ここには翻訳者の遊び心がうかがえますね。

さて、それではそろそろ本題に入りましょう。

実際にお酒が注がれているのは4回ある内の始めの2回。1回目はちょっと見にくいのですが、2回目は確実にそのボトルが見えます。

ラベルに鮮やかな赤い斜めの帯。今とデザインは多少違いますが、それは紛れもないシャンパンのマム・コルドンでした!

今は世界最高峰のモータースポーツ「F1」の公式シャンパーニュで、表彰台でシャンパンファイトにも使われているようなシャンパンですが、このような映画のワンシーンに使われているくらいですから、当時からそれなりの地位があるシャンパンだったのでしょうね。

更に作中では「ドイツ兵にシャンパンを飲まれるくらいなら捨てた方がマシだ。飲み干してしまおう。」という台詞もあり、シャンパーニュが世界が認める偉大なスパークリングワインという認識があることもうかがえます。

日本でも、今でもお祝いの場には必ずと言って良い程シャンパンがあることも頷けますね。

それでは、私が最初におすすめするこのシーンのように、男性はハンフリー・ボガートになった気分で「君の瞳に乾杯」、もしくは初対面の方に「謎の美人に乾杯」の方を選ぶか、はたまた思い切って英語で「Here’s looking at you,kid」を選ぶか、グラスを片手にお好きなセリフで乾杯!

女性のリアクションまでは私は責任は持てませんが(笑)
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メゾン マム – シャンパン – ペルノ・リカール・ジャパン

「007 ジェームズ・ボンドが愛飲するシャンパーニュ Bollinger」の生誕は?

続きまして、男性の皆様はきっと誰しもが憧れるジェームズ・ボンドが愛飲するシャンパーニュBollinger。

ジェームズ・ボンドが劇中でボランジェを愛飲していることは、日本でも割と知られている情報だとは思うのですが、実はこのボランジェが初めて登場するのは007シリーズ第8作「007 死ぬのは奴らだ(Live And Let Die)」だと言われております。

それまではジェームズ・ボンドの愛飲シャンパーニュと言えばあのドンペリニョンで、三代目ジェームズ・ボンドとしてロジャー・ムーアが初主演した今作から愛飲シャンパーニュがボランジェに変わり、現在の六代目ジェームズ・ボンドのダニエル・クレイグ主演の第22作目「007 慰めの報酬」から本格的なコラボレーションとなったようです。

ロジャー・ムーアが唐突にボランジェをルームサービスに注文するシーンが記念すべきボランジェと007のコラボレーション第一歩目となるわけですが、ここでは残念ながらラベルまでの確認はできず、ウエイターが持ってきたボランジェのロゴ入りクーラーから少しだけ見えるボトルのキャップを見るに、恐らくプレステージのLa Grand Année (グランダネ)でしょうか。

ボランジェは、1829年、ピノ・ノワールの名産地、アイ村に創業した家族経営のメゾン。芳醇で力強い味わいは、確かにジェームズ・ボンドを彷彿とさせる。英国王室御用達となったメゾン第1号でもあり、ヴィクトリア女王の時代から現在のエリザベス女王まで、歴代王からロイヤルワラントを授けられるなど、まさに“女王陛下のシャンパーニュ”でもあります。

地元シャンパーニュにおいてもボランジェは一目置かれる存在で、伝統の技法によって生み出される奥深い味はもちろんですが、その理由は、3代目ジャック・ボランジェの妻、エリザベス・リリー・ボランジェ(通称マダム・リリー)の存在によるところも大きい。

彼女は45歳で寡婦となり、以後、メゾンを守り続けた伝説の人物。第二次世界大戦下、遠くにドイツ軍の爆撃音を聞きながら、ひとりだけ残ったスタッフとともにシャンパーニュを造り続けたという逸話があるようです。

また、ドイツの通称“ワイン総統”(ナチスドイツがフランスワインを安く調達するために任命された調達係)がシャンパーニュの供出を促しにメゾンを訪れた時には、小柄な彼女がたったひとりで大男のワイン総統に立ち向かい、追い返したという武勇伝も残っているようです。

前述した「カサブランカ」のワンシーンもそうですが、やはりシャンパンはシャンパーニュ人、フランス人にとっての誇りであり、それを守り続けた彼女は、亡くなった今も多くの人々の尊敬を集めていると言われております。

作中で出てきていたのであろうBollinger La Grand Année Brut(ボランジェ ラ グラン ダネ ブリュット)は、ジャック・ボランジェによって創設されてから現在に至るまで、設立当時から変わることなくボランジェ一族によって生産における厳しい基準が保ち続けられているプレステージシャンパーニュです。

サスペンスの神「アルフレッド・ヒッチコック」の作品に登場するワイン

足を骨折し入院生活中の新聞記者が、暇潰しに隣のアパートの裏窓から人様の家を覗き見をしていたらとある現場を目撃してしまい、職業柄好奇心旺盛の彼が余計な詮索をしてしまった故にとんでもない事件に巻き込まれてしまうというヒッチコックの名作「裏窓」。

ジェームズ・ステュアート演じる骨折中の新聞記者ジェフに、グレイス・ケリー演じるジェフの恋人リザがお見舞いに高級レストランからわざわざウエイターに運ばせてまで持ち込んだ白ワインがあります。

リザが「高級なワインよ」と言ったその白ワイン、なんとあのロマネコンティの造り手であるドメイヌ・ド・ラ・ロマネコンティ社のモンラッシェなのです!

ロマネコンティと言えば、皆様も恐らく御存知であろう軽く100万円は超えてくる世界最高峰の超高級ワイン。モンラッシェも、このDRC社のものは数十万円する代物。

入院中のお祝いにしては高価過ぎるワインで、当時はここまで高価ではなくても高級な白ワインであったことは間違いございません。

作中では何気なく「モンラッシェよ」なんて言ってサッと流れますが、それはそれは素晴らしい白ワインです。

そこには映画のワンシーンを演出する効果はもちろん、ヒッチコックの映画の存在そのものを引き立てる役割も果たしているように感じます。

日本酒が銘柄名も言われて映画に登場するシーンなどちょっと思い浮かばないですから、やはりワインそのものがある種特別なお酒であると言えると思います。

DRCのモンラッシェは高額ですので気軽におすすめはできませんが、今回はそれを飲むワンシーンが私のおすすめです。

窓際に座るグレイス・ケリーのグラスの中に見えるモンラッシェは、本来は黄金色のはずが差し込む夕陽によってまるで赤ワインのような色に染まり、美しき恋人リザをよりエレガントに演出しております。

さあ今度は女性陣の番です。グレイス・ケリーになったつもりで男性陣を魅了してください!
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ジェームズ・ボンドが敵の殺し屋を見破ったClaret(クラレット)とは?

007シリーズに戻りますが、ショーン・コネリーがジェームズ・ボンド役に復活する第7作目「ダイヤモンドは永遠に」ではこんなシーンがあります。

任務を終え、ジル・セント・ジョン演じるボンドガールのティファニーと船上にてディナーを楽しむラストシーンで、ソムリエが持ってきたワインは何と五大シャトーのムートンロートシルト1955年物。

この高級ワインをテイスティングしたボンドが発したセリフが「この食事にはクラレットが合う」と。

それを聞いたソムリエが「残念ながら当船にはクラレットがなくて…」と返すのですが、それを聞いたボンドは彼が偽物のソムリエであることに気づき、敵の殺し屋であることを見破るのです。

これはどういうことなのか…?

ボルドーワインといえば濃いルビー色でタンニンが効いた力強いイメージですが、当時は薄く明るい色をしていたそうで、フランス語で「薄色の赤ワイン」を意味する「クレーレ」(Clairet)と呼ばれていました。これが由来となって、イギリスではボルドー地方のワインを英語で「Claret(クラレット)」と呼んでいるのです。

ボルドーワインを持ってきたソムリエに対してクラレット、即ちボルドーワインは合うと言ったのに、「クラレット(ボルドーワイン)は無い」と言い放ってしまったソムリエは本物ではなく殺し屋だと見破られてしまったというわけです。

ワインの有資格者か造詣が深い人でない限り、恐らくほとんどの日本人の方が理解できないシーンではないかと思います。

少なくともムートンロートシルトがボルドーワインであることを知らないと理解できないシーンですね。

ちなみにブルゴーニュワインの事は「Burgundy(バーガンディ)」。こちらは何となく理解できますね。

今でこそあまり聞かなくなった呼び名ですが、ワインを生業にする人間であれば知っていて当然の知識だったのでしょう。

最後にオチがあるような映画が好きな私としては、このウンチクとともにおすすめしたいワンシーンです!

今ではイギリス王室御用達インポーターのBerry Bros.& Rudd(ベリー・ブラザーズ & ラッド)社が、このクラレットとバーガンディの呼び名を使っているワインを販売しております。
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2017 ベリーズ・グッド・オーディナリー・クラレット ベリーズ・オウン・セレクション ベリー・ブラザーズ&ラッド

あの偉大な五大シャトーを…

最後は、日本ではあまり知られていないかもしれませんがフランスでは割と知られているコメディー映画と、それに出てくるワインのワンシーンを御紹介。

映画名は「Le dîner de cons(ル ディネ ドゥ コン)」。邦名は「奇人たちの晩餐会」。

この何とも不可解な題名通りの奇想天外なドタバタ喜劇が始まる訳ですが、その途中、フランスが世界に誇る五大シャトーの一つ「Ch.Lafite-Rothschild(シャトー ラフィット ロートシルト)」の78年物が出てくるシーンがあります。

この偉大なワインになんとお酢を混ぜて不味くしようとする!

五大シャトーのワインの価値がわからないメンバーではない。むしろこの価値を重々理解した上でこんな行動にでるのですが、何故こんな事をしなければならなかったのか⁈

それはこの映画を観てからのお楽しみです!

最後に私から、おすすめフランス映画も含めての御提案でした。

【参考】
奇人たちの晩餐会(Wikipedia)

というわけで今回のテーマは、「日本人が意外と知らない『映画とワイン』のおすすめ豆知識」でした。

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