ワインコンサルタント&ソムリエの広瀬勇二です。
今回のテーマは、「簡単!美味しいホットワインの作り方を考えてみた!」です。
ポイントは「考える」というところ。
ホットワインの一般的な作り方の情報は、検索すれば山ほど出てきます。
どのサイトを見ても、スタンダードなホットワインの作り方というのはそう変わるものではありません。
小鍋にワインとはちみつ、ハーブなどを入れて、お好みで生姜を入れるなどして温め、オレンジやレモンなどのフルーツも入れて…といったところでしょうか。
ちょっとお洒落にシナモンスティックを入れる。またはちみつをラムやリキュールなどのお酒に替えて、より大人っぽい味にするというようなアレンジもありますが、基本的な部分はどれもさほど変わらない気がします。
せっかく自身のお好みで自由に作ることができるのがホットワイン作りの楽しいところですから、今回はスタンダードな作り方をベースにしながら、もうひと工夫、もしくは少しアレンジをして、自分の飲みたい味わいになるようなホットワインの作り方を考えていきたいと思います。
海外のホットワイン
ホットワインとは文字通り温めたワインのことですが、実は和製英語。
海外ではホットワインとは言いませんので注意が必要のようです。
英語圏のイギリスではマルドワイン(mulled wine)、ワインの本場フランスではヴァンショー(vin chaud 熱いワイン)、そしてドイツではグリューワイン(glühwein グリューヴァイン)と呼び、イギリスと同じ英語圏のアメリカでは、ドイツの呼び名そのままでグリューワインと言うそうです。
ホットワインの起源をさかのぼると、紀元前からとも1世紀からとも言われています。ヨーロッパ諸国で、飲み頃を過ぎてしまったワイン(主に赤ワイン)に砂糖やスパイスを足して煮出したものが、厳しい冬の間に愛飲されたことが始まりのようです。
昔のワインは酸味が強かったため、当時はホットワインでなくてもハチミツなどを加えてバランスをとるのが一般的でしたが、お酒は薬の役目も果たしておりましたので、元々身体に良いワインに、レモンやオレンジを入れてビタミンCを、ハーブなどを加えて血行促進や強壮作用を、そして生姜を加えて発汗作用を促すなどして、厳しい冬を健康に乗り切るための定番の飲み物になっていったことは容易に想像がつきます。
ホットワインは、ドイツやフランスを始めとするヨーロッパのクリスマスには欠かせない飲み物となっており、特に11月中旬あたりから開かれる各地のクリスマスマーケットでホットワインを楽しむことができるようです。
また、ホットワインと言えば赤ワインのイメージが強いですが、白ワインやロゼワインでも作られており、白ワインで有名なフランスのアルザス地方などでは、白ワインを用いたヴァン・ショー・ブラン(vin chaud blanc)もあり、この場合はシナモンは加えず、お好みで砂糖やレモンの薄切りなどを加えて味を調整しているようです。
沸騰させなくても若干アルコール分は飛ぶので、ドイツではそれを補うためにラム酒などの蒸留酒を足して飲むこともあるようで、蒸留酒入りの場合はグリューヴァイン・ミット・シュス(Glühwein mit Schuss)と呼ばれ、これは「(蒸留酒を)ひと振り加えたグリューワイン」という意味のようです。
また、イギリスのマルドワインはポートワインを使うところが特徴的で、ポートワインと言えばイギリスのブルーチーズ「スティルトン(stilton)」と合わせるのが伝統的ですが、そもそも日常的に家庭で作られるのがホットワインですから、その時に同じく日常的に家庭に置いてある蒸留酒がポートワインなのかもしれないと考えると、これも必然なのかもしれませんね。
このように、少し掘り下げるだけでも国や地域によってホットワインのレシピや使うお酒も様々。
自分だけのお気に入りのホットワインのレシピ、是非見つけたいものですね!
赤ワインを使用する場合は苦味に注意!
前述したように、ホットワインと言えば赤ワインを使用したものが一般的で、風邪の予防としての飲み方もされているので、一般的なレシピで作ると若干「良薬は口に苦し」というような味わいにもなってしまいます。
もちろんそれも含めてホットワインなのですが、もう少し飲みやすく、また自分に合った味わいにすることもできますので、ここではそのポイントをお伝えできればと思います。
サイトによって様々な作り方が載っておりますが、まず主な材料は以下のような感じだと思います。
↓↓↓
・赤ワイン
・はちみつor砂糖
・シナモンスティック(粉末でも可)
・その他のハーブ、スパイス(クローブ、スターアニス、ナツメグ、生姜など)
・フルーツ(レモン、オレンジなど)
・その他のお酒(ラム、ポートワイン、リキュールなど)
どれを入れる入れない、またフルーツはスライスするなど、様々アレンジはあるかと思いますが、だいたい材料こんなところだと思います。
この中で、苦味や刺激の強い味わいになってしまう材料を抜けば、よりマイルドな味わいのホットワインができるわけですが、赤ワイン自体が渋みがありますので、その個性は生かしつつ自分の好みではない苦味の元になる材料は抜いていきましょう。
ホットワインの特長は、まずは温めることによって湧き上がる香りです。
使用するワインにもよりますが、とても華やかな香りが心地良いので、それを損なうのは勿体ない気がします。
色々なハーブやスパイスを入れて様々な効能があるホットワインにしたいところですが、入れ過ぎてしまうと、味はもちろん香りまで損ねてしまうので気をつけなければなりません。
そこで私が考える香りを損ねないポイントは、「材料を入れる順番でコントロールする」ことです。
自分が不必要と思う材料を抜けばそれが一番簡単ですが、せっかくのハーブやスパイスが持っている様々な効能も捨てがたいという方は、材料を入れる順番でコントロールすることで多少調整することができます。
基本的な作り方としては、最初に「小鍋に材料を入れて弱火でコトコト煮込み…」という具合かと思いますが、この時に、「最初にクセの強い材料だけを先に入れる」ことがポイントです。
自分にとって苦手な香り、もしくは加わってほしくない香りの材料を先に入れて煮込みます。そして充分に煮込んで抽出して、温度が上がっていくにつれて気化してアルコールとともに香りも多少飛んでいきますので、その後、茶漉しで材料が入ったワインを漉して材料を取り除き、再び小鍋に戻して次は自分の好きな材料を入れてもう一度煮込みます。
その際、二度目の煮込み時には蓋を閉めて煮込みましょう。
このように煮込むと、二度目の好きな香りは小鍋内にこもり、一度目の材料の香りも多少は出てしまいますが、比較的自分の好きな材料の香りと味わいが強いホットワインに仕上がります。
例えば私であれば、シナモンは好きなのですが生姜はあまり好きではないので、生姜は一度目の煮込み時に加えて茶漉しで取り除き、二度目の煮込みでシナモンを加えて蓋をして煮込むわけです。
また、「レモンやオレンジを加えてよりフルーティーに」というような作り方も紹介されておりますが、実はレモンやオレンジは、酸味や苦味が増える要素が強いです。
特に皮をつけたままのスライスで入れると、皮には苦味がありますので、それこそ最初にこれらを入れて煮込んでしまうと苦味の強い味わいになってしまいます。
もちろんそれが好きという方は全く問題ないのですが、苦味は抑えたいという方は、レモンやオレンジのフルーツは皮は取って後から入れる、もしくは入れない方が苦味は抑えられます。
フルーティさを強めたいという理由でフルーツを加えるのであれば、ブルーベリーなどのベリー系のフルーツ、もしくはりんごを加えることを私はオススメいたします。
あとははちみつの代わりにジャムを使うなど、苦味は出ないように果実味を加える方法を考えると良いでしょう。
二度煮込むとどうしてもアルコールも通常の作り方に比べると飛んでしまいますので、アルコールを補充するために二度目の煮込み時にラム酒やポートワインを加えるのもおすすめです。
私も実は赤ワインを使うホットワインはスパイスが方が好きなのですが、もしもう少し飲みやすい味わいにしたいとと考えの方は、この方法で味を調整するとよろしいかと思いますので、是非色々試してご自身の好きな味わいに仕上げてみるのも面白いと思います。
白ワインは飲みやすく仕上げる!
ホットワインは赤ワインだけではなく白ワインで作ることもできます。
むしろ白ワインは赤ワインに比べて渋みが無い分、よりフルーティな味わいには仕上げやすいでしょう。
お好みはあるかと思いますが、飲みやすくてフルーティなホットワインをお望みの方には白ワインがおすすめです。
白ワインを使ったホットワインの作り方もたくさん載っておりますが、私がおすすめする作り方は、やはり白ワインの場合はハーブやスパイスは抑えてよりフルーティな味わいに仕上げることです。
ハーブやスパイスはシナモンのみ。お好みで生姜も加えて、甘さ調整もはちみつのみにし、ラム酒やポートワインも加えずに、極力白ワインの風味をそのまま生かすような作り方が良いのではないかと思います。
ただ、赤ワインを使ったホットワインとは違い、多少酸味は加えた方が良いと思いますので、赤ワインではあまり奨励していなかったレモンやオレンジは加えた方が良いバランスになります。
皮つきのスライスを入れて、敢えて苦味を少し出すのもよろしいかと思います。
あとはローリエや鷹の爪なんかを加えるレシピもあるようですが、確かに興味深くて面白そうですね。
他にははちみつの代わりにマーマレードを加えるなど、甘さを加える時に少し苦味や酸味を伴う材料を使用するのも良いですね。
元々渋みを有する赤ワインは、熱するとその渋みが益々際立ってきてしまいますので、それをスパイスやハーブを使って中和もさせつつ味を整えていきましたが、白ワインの場合はそのまま温めて充分成り立つ味わいですので、あとは甘さを加えてより飲みやすく、そして酸味や苦味を少し加えて飲みごたえもある味わいにしていくといったところでしょうか。
あまり加え過ぎないというところが、白ワインを使った美味しいホットワインを作るポイントです。
一番ポテンシャルが高い!?ロゼのホットワイン
赤ワイン、白ワインに比べると、そもそもその消費量自体が圧倒的に少ないロゼワイン。
日本では桜の季節に少々売れるかといった程度で、日常的にはあまり飲まれていないロゼワインですが、実はホットワインとして使うと一番美味しくポテンシャルも感じるのがロゼワインです。
特に甘口ロゼワインを使ったホットワインは、赤ワイン、白ワイン、どちらの良い要素も活かすことができ、私としては最も美味しいホットワインができるのではと感じております。
ロゼワインを使ったホットワインの作り方も検索すればたくさん出てきますが、まずロゼワインを使う良い点は、まさに「白ワインと赤ワインの中間の味わい」だからです。
温めると渋みが際立ち過ぎてしまう赤ワインと、逆に渋みが無いので少し飲みごたえのある味わいも加えなければならない白ワインでしたが、そのどちらもする必要がないのがロゼワインです。
程良い渋み、程良い果実味を有しているので、常温ではどちらも中途半端な中間の味わい(それがロゼの良い特長なのですが)という感も否めませんが、ホットワインの場合はそれがとても都合が良いのです。
特に甘口のロゼワインを使うと、多少の甘みが既にありますので、本当に自分のお好みで材料を自由に入れてアレンジができます。
白赤ワインでは欠かせなかったシナモンですが、ロゼの場合は必ずしもシナモンを使わなくても良いと思います。
前述してきた赤ワインと白ワインのホットワインの作り方のポイントを参考にしていただきながら、自分の好きな材料を加えてみてください。
スパイスは大人な香りのスターアニス、フルーツに苦味などが出にくいりんご、甘みははちみつでも問題ないですが、少し果実のリキュールを加える、またサイトによっては紅茶を推奨している作り方も記載されております。
どれもとても面白いと思いますね!
一番自由にアレンジができて、ポテンシャルも高いのがロゼワインを使ったホットワイン。
残念ながら消費量は一番少ないロゼワインを応援するためにも、是非ロゼワインを使ったホットワインの美味しい作り方を色々研究してみてはいかがでしょうか。
レンジで簡単ホットワイン
ここまで基本的には小鍋で煮詰めることを前提としたホットワインの作り方を考えてきましたが、実はレンジで簡単にできるホットワインの作り方もあります。
極論を言ってしまうと、ただ単純にワインをレンジで温め、その後、その中に材料を加えるだけでそこそこのホットワインはできてしまいます。
ただ、やはり抽出という意味では電子レンジでは物足りないので、あくまで後から加えても支障がないもの(粉末シナモンやフルーツなど)が材料のメインの時の方が良いとは思います。
できれば正攻法で小鍋で色々煮詰めたいが、材料を揃えるのも、調理をするのもちょっと面倒だという方には、ホットワイン用で既にある程度味付けがしてある市販のホットワインを使用すると良いでしょう。
以前はクリスマスシーズンになるとKALDI(カルディ)で「ラプルンツェル」というドイツ産のホットワイン用ワインが赤白ともに販売されていたのですが、輸入元の株式会社オーバーシーズが、同じくドイツ産のホットワインを販売しております。
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Saint Charles GLUWEINセント・チャールズ グリューワイン|WINE CATALOG|overseas
また、エノテカでも同様にドイツ産ホットワインと、ホットワイン用のスパイスミックスなども販売しておりますので、ご家庭でお手軽にホットワイン作りが楽しめる材料を揃えることができます。
↓↓↓
スペシャル ホットワイン アップル&マンゴー | エノテカ – ワイン通販
飲食店でも、ホットワインを注文すると色々なレシピ、アレンジのものが出てきます。
中には普段あまりご要望が無いためか「えっ?」と戸惑うお店もあるくらいです。日本でもヨーロッパ同様にもっとホットワインが日常的になると良いですね!
というわけで今回のテーマは、「簡単!美味しいホットワインの作り方を考えてみた!」でした。